前回は、「復職」に焦点を当てて、就業規則の見直しについて書き
ました。
現場の担当者の方が最も頭を悩ますことの一つに、メンタルへルス
不全により休職中の従業員への対応、があるのではないでしょうか。
「休職中には会社側から連絡を取ってはいけない」
「精神的な負担となるような、話し方をしてはいけない」
「入院中にはお見舞いにも行ってはいけない」
...
などなど、いろいろなことが言われていますよね。このような言葉
だけが先行して、結局休職中の従業員とまったく連絡が取れていな
い、とか、なかば無視している、とかいう状況もあるのではないで
しょうか。
ポイントは
「メンタルヘルス不全という病気や本人の特性を考慮しつつも、必
要なコンタクトを必要な場面で取り、情報収集を怠らない」
です。
具体的に考えて行きましょう。
まずは「メンタルヘルス不全という病気や本人の特性を考慮する」
について。これは文字にするのは簡単なことですが、実際に行うの
は、とても難しいことですね。
特に、人事労務単独で、この点を考慮するのには限界があると思い
ます。可能であれば社内の保健スタッフや産業医と相談しながらす
すめていくことが良いでしょう。
とはいえ、一般的なことはここで書くことが出来ます。一般に言わ
れる「うつ病」による休職者の方を例にとりましょう。
この病気は、まずは脳の機能障害ということを理解してください。
脳内では情報は電気信号として神経細胞の中を通ってきます。しか
し、神経細胞と神経細胞の間は、シナプス間隙という隙間があり、
ここでは、「神経伝達物質」という物質を通して、情報が伝達され
ると理解されています。
この「神経伝達物質」にはいくつかの種類があるのですが、うつ病
では「セロトニン」という物質が関係しているとされています。神
経細胞間の、セロトニンを介した情報伝達がスムーズにいかない場
合に、症状があらわれてくるのです。
つまり、「がんばれ!」「根性出せ!」「気合いだ!」といくら大
声を上げたところで、セロトニンはうまく伝わりません。このよう
な精神論で症状が改善したり、完治するような病気ではないのです。
それどころか、上記のような言葉掛けは、精神的な負荷となり、症
状を悪化させ、最悪の場合には、自殺につながりかねません。ここ
でいう「うつ病」では、3か月から半年ぐらいの休養、しかも会社や
仕事から完全に離れた形での休養と、医師の指導のもとの服薬が回
復への基本となっています。現在ではセロトニンの取り込みをスム
ーズにする比較的副作用も少ないお薬も出ています。
まずは、この点をしっかりと理解しておいてください。
次に、このような「うつ病」になりやすい性格傾向も存在するとい
う点も頭に入れておいたほうがよいでしょう。
具体的には、「まじめ」「几帳面」「他者配慮が強い」人たちです。
私がもし、女性であればこのような男性は、魅力的に思いますが。。
残念ながら、このような性格傾向の方は発症のリスクが高いというこ
とです。相手に合わせすぎ、自分の気持ちは外に伝えず、自分の中に
押し込めてしまう状況が続けば、やがて発症のきっかけになるのでし
ょうか。
最後に、「自殺」を考慮すべき精神疾患であるということも頭に入れ
ておいてください。
自殺した方の約9割が、自殺時に何らかの精神疾患を有していたという
研究結果があります。またそのうちの実に6割が「うつ病」であったそ
うです。
自殺を考慮する精神疾患には、他に統合失調症がありますが、発症の
年齢から考えると、企業内でそれほど多いとは考えられません。とい
うことは、企業内で自殺してしまった方のほとんどは「うつ病」もし
くは「うつ状態」であったと考えられるのです。
「自殺」の兆候は、精神科医でもカウンセラーでも完全に見極めるこ
とは難しいものです。しかし、一般的なことは頭に入れておいて役に
たつと思います。
・だるそう、元気がない、倒れる
・急に身辺整理をはじめたり、手紙を書くようになる
・寝不足でやつれてきている
・急に無口になる、表情がうつろ
・業務の能率が下がる、無断欠勤が多くなる
・業務上の判断力が低下し、ミスが多くなる
・自殺をほのめかす
「遠くに行ってしまいたい」「生きていても仕方がない」など
・自殺未遂
一言にメンタルヘルス不全、といっても様々な種類のものがあります。
うつ病だけとっても、今回ご紹介したうつ病とは特性の異なるものも
あるのです。実際場面では、あがってきた診断書の診断名の信頼性な
ども考慮すると、現場で予測することは困難かもしれません。
しかし、主治医との連携強化や産業医の活用により、より多くの情報
を得て、本人の有する問題の特性を理解するよう努めることは、その
後の対応を考える上でもかかせない取り組みであると感じています。
少しボリュームが大きくなってきたので、
「必要なコンタクトを必要な場面で取り、情報収集を怠らない」
については、次回のコラムに譲りますね。
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