前回まで、改訂された「復職支援の手引き」について思うことを述べ
てきましたが、今回は少し脱線してみたいと思います。
「メンタルヘルス対策って何?」「そもそもなぜ必要なの?}こうい
ったご質問をいただくことも多くなってきています。今回はこのよう
なそもそもの質問に対する話題を、題して
【今なぜメンタルヘルス対策が必要とされているのか】...
「営業の○○くんが昨日から連絡なく会社を休んでいるようです」突然
このような報告が入りました。
「そういえば、○○くん最近元気がなかったなぁ」「早退することもあ
ったし、なんだか思いつめていた様子もあったなぁ」「風邪かなぁ、ぐ
らいに思っていたんだけど」
中規模会社ですから、上司や同僚から後になって色々な情報がもたらさ
れました。「もしかして○○くんはうつ病(メンタルヘルス不全)で休
んでいるのかも」勘の良いあなたは気づきます。「うつ病は自殺のリス
クの高い病気です」こんなフレーズも思い出され、あなたの心配はピー
クに達します。
このようなことが、実はそれほど珍しいことではないのは、会社の責任
者もしくは部門の長である皆さんが一番よく御存じなのではないでしょ
うか。
最新のデータでは、我が国の自殺者は今年も年間3万人を超えるペース
しかも最悪に近いペースで推移しているとのことです。11年連続での
3万人越え。「交通事故戦争」と声高に叫ばれましたが、現在の自殺者
数は交通事故による死者数の実に5倍を超える数字なのです。1年間に
「うつ病」になる確率「有病率」は、5%から10%といわれます。1
0人従業員がいれば、あなたも含めて年間に1人はうつ病もしくはその
ような状態になっても、実はおかしくはないのです。
このような背景の中で、平成11年9月、当時の労働省は、労災認定基
準を緩和しました。「故意の自殺であっても精神疾患の延長であれば認
められる」ことになったのです。この年から、精神障害等での労災認定
の請求件数は劇的に増加しています。これに呼応する形で、実際の認定
数も増加しています。
さらに、過労自殺を扱ったいわゆる「電通事件」で企業側に1億円を超
える賠償が課せられ、企業での「安全配慮義務」が大きく注目されるこ
ととなりました。
「安全配慮義務」とは、近年ようやく労働契約法の中に明文化されまし
たが、それまでは法律上の明文規定ではなく、最高裁の判例によって確
立された概念で、企業と従業員が結ぶ雇用契約において発生する「信義
則」の一つでした。雇用主は雇用契約に基づいて賃金のみを支払えばよ
いのではなく、『職場環境の整備、作業の進行方法の指示等の場面にお
いて、企業が従業員の生命、健康が損なわれないよう配慮するべき義務』
も有していると考えるのです。現在では、この範疇に体や心の問題など
も含まれると解され、「健康配慮義務」と呼ばれるようになってきまし
た。この「健康配慮義務」に対する違反、すなわち企業側の過失が認め
られる場合には、労災とは別に、企業には損害賠償というリスクが現れ
るのです。
「精神疾患や自殺者数の増加」「労災認定基準の緩和」そして「司法判
断の変化」。これらこそが企業に「リスクマネジメント」としてのメン
タルヘルス対策を強く要求しているのです。
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